まずいラーメンが食いたい Part 2
やってきたのは隣町にあるショッピングセンター「マスト」
お目当ては、ここに出店しているラーメンショップ「このさん食堂」
ショッピングセンターの客入りの便乗に授かろうと言う魂胆が透けて見えそうな、この店。
「美味いわけがない。」
ただ、ひとけの多い場所を嫌う私にとっては好都合のガラガラ状態。
どうやらラストオーダー間近だったらしい。
入ってすぐに目についた、店の名が入った「このさんラーメン」を注文。
「唯一の自信メニューなのかも知れないが・・・」とタカをくくって、席に着いた。
しかし、店内の看板を見て、すぐに予想を覆された。
なんと、この店は創業が昭和44年だと記されている。
「な、なに?」
すると私の生まれる前からの老舗ということになる。
しかし、このショッピングセンター自体が平成に入ってからのオープンなはず。
「なんだ、この店は嘘も平気で記すほど、切羽詰まった状態なのか」
俺はそう疑った。
「今夜は“まずいラーメン”が楽しめそうだ。」
しかし、店主が運んできたラーメンに俺は出鼻をくじかれた。
器から漂う鶏出汁の美味そうな香、そして黄金色に輝くスープが食欲をそそる。
「いやいや、美味そうなのは見た目と香りだけ、美味いわけがない。」
俺はスープをひと口すすって、怒りに震えた。
「なんだ、この美味いスープは。鶏の旨味を丁寧に凝縮させた上に、仄かなにぼしのコクが深みを感じさせる、絶品ラーメンじゃないか。」
具材はシンプルながら、ホロホロとくずれるチャーシューは舌の上で溶けるほどの柔らかさだ。
俺は、たまらず、一気にスープまで飲み干し、完食した。
予想に反した「絶品ラーメン」に悔しさを隠せず、店主に聞いた。
「いつから、ここで店を始めたんですか?」
店主は答えた。
「震災がある前までは、街中に店を構えてたんだ。」
店主は多くを語らず、俺はこれからも応援しようと決めた。
帰りしな、俺は店主に「美味かったですよ」と伝えたら、
店主は「“どうせ、ショッピングセンターのラーメンなんて、まずいに決まってるんだろう”って思って来たんだろう?」
という目をしているように見えた。
勿論、気のせいだ。
「まずいラーメンを食いたい」は、好評を得ないまま、今日をもって、シリーズ化となりました。
ごっつぁんです!
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